消毒薬が品薄だった第一波のとき、ポピドンヨードに関して書いた記事を公開せずに削除しました。
公開しなかった理由は記事の内容に自信がなかったからだが、ポピドンヨードを含む含嗽剤で新型コロナウイルスの感染拡大防止に繋がる可能性を吉村府知事が発言されて話題になったので、私も便乗させてもらうことにします。
買い占めが起きたり、エビデンスが乏しいなど世論の反応は様々でしたが・・・
新型コロナウイルス関連の報道に登場する感染症専門家の先生方の意見は、同じ内容の繰り返しですね。
吉村府知事が発表した内容は、少しでも可能性があるので私は称賛すべきと思います。買い占めが起こってしまったことは残念ですが、買い占めた輩が悪い。
効果があるのか?と疑問視されてますが、そんなことは分からないです。
ただ重症化を抑える、感染飛沫を抑える可能性は全くゼロじゃない。
今回は消毒薬について少し詳しく見てみたいと思います。
ご興味をお持ちいただける方は最後までお付き合い頂けると幸いです。
INDEX
滅菌・消毒 それらの種類
まず最初に滅菌と消毒の定義と、消毒薬の種類を見てみましょう。
滅菌とは:病原性の有無に関わらず、全ての微生物を殺滅し無菌状態にすることを表します。※プリオン等、一部例外もあります。
代表例
- オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)
- 乾熱滅菌
- 紫外線滅菌
- 放射線滅菌
- ガス滅菌
- プラズマ滅菌
消毒とは:少なくとも目的の病原微生物を殺滅し除去することを表します。
消毒薬は大きく3つに分類されます。
高水準消毒薬(生体には使わないのが一般的)
代表例
中水準消毒薬(ウイルスに関係する範囲)
代表例
- ハロゲン系薬剤(次亜塩素酸ナトリウム)
- ヨード系(ポピドンヨード)
- アルコール類(エタノール・イソプロパノール)
- フェノール類(クレゾール石鹸・石炭酸)←主に一般細菌・ウイルスには無効
低水準消毒液(主に一般細菌・ウイルスには無効)
代表例
- 第四級アンモニウム塩(ベンザルコニウム塩化物・ベンゼトニウム塩化物・逆性石けん)
- グリシン系両性界面活性剤(アルキル・ジアミノエチルグリシン塩酸塩)
- ヒグアナイド系(クロルヘキシジングルコン酸塩)
- 酸化剤(過酸化水素)
その他
煮沸消毒
ウイルスに有効な消毒薬
上記に示した消毒薬でウイルスに有効とされるのは、高水準消毒薬と赤字で示した中水準消毒薬になります。
ウイルスは細胞内に侵入し増殖するので、口腔内に浮遊するウイルスにしか効果はありません。
身体はとても良くできていて、唾液には数種類もの抗菌作用・抗ウイルス作用因子が含まれています。
なかでも免疫グロブリンIgGやIgM、白血球プロテアーゼ阻害因子、インターフェロン、消化管や粘膜上皮から分泌されるβデフェンシンなどは特にウイルスに活性を示します。
消毒薬の過度な使用により粘膜を傷つけ、生体がもつ生体防御機能を阻害する可能性も否定できないため、容量用法を守って使わなくてはなりません。
余談ですが、新型コロナウイルスに神経質になられてる方いらっしゃいますよね。
ご自身を守るためなので大変素晴らしと思いますが、誤った消毒薬の使い方をすると大変な目に合うことがあります。
とある男性の話ですが、トイレに行くたびに持ち歩いてた次亜塩素酸水で陰部を消毒してた人がいて....
いくらトイレ内で感染のリスクがあるとは言え、用を足すたびに消毒すれば爛れますよね(-_-;)
話を戻して、中水準消毒薬についてもう少し見ていきましょう!
赤字で書いた消毒薬のうち、次亜塩素酸ナトリウムとアルコールは皆さんも新型コロナウイルスに有効と周知されてると思います。
食塩や塩酸を水に溶かして電気分解した次亜塩素酸水もお馴染みですよね。
では、ポピドンヨードはどうでしょう。
画像:小林製薬
この研究結果をみるとコロナウイルスにはヨウ素(Ⅰ)は有効だが、ポピドンヨード(PVPI)は効果なしとなっています。
この結果だけで判断すると効果がないように見えますが、消毒薬の有効性はグレーゾーンが存在し、正確な情報が乏しい部分があるんですよ。
吉村府知事が発表したことで色んな議論を呼び、現段階では新型コロナウイルスにポピドンヨード含有の含嗽剤でうがいをしても感染予防効果を期待できないとされています。
しかしポピドンヨードはウイルスに対して一定の効果が認められてる消毒薬です。
もしかしたら何かしらの効果を望める可能性もあるわけで....
今後どのような研究結果がでるか分りませんが、ポピドンヨードに一定の効果が認められると期待しています。
ポピドンヨードの用途・注意事項
ポピドンヨードは医療現場でも良く使われる消毒薬で、皮膚や粘膜の消毒に使用できることから術野の消毒に使用されたり、粘膜創傷部位に使用できるので抜歯後の消毒にも使用されています。
イソジンが品薄になって歯科治療に影響が出て問題になってますよね。
その他にもヨードでんぷん反応を利用して内視鏡検査、多汗症の治療(アポクリン汗腺を発見したり)、口腔癌の切除部位の決定など消毒以外にも用途は多岐にわたります。
ポピドンヨードが遊離するヨードは、放射性同位体で放射線療法やCTや血管造影などの画像診断に利用されたり、甲状腺に集積する作用を利用して甲状腺シンチグラフィ(PET)にも使用されています。
注意事項は報道でも取り上げられてましたが、甲状腺に集積するので甲状腺に関わる疾患をお持ちの方は使用してはいけません。
また妊婦さんはヨードが過剰になり甲状腺ホルモンに異常が出やすく、吸収されたものは胎盤通過し、母乳に移行してしまします。
あとアレルギーにも注意が必要です。
最近は怪我などの外傷にも消毒薬をあまり使わなくなりました。
消毒薬が組織を障害することによって治癒が遅くなったり、綺麗に治らないと分かってきたからです。
一昔前は怪我をすると洗って過酸化水素(オキシドール)で消毒でしたが、今は傷口を流水で流して体外に出る浸出液を利用して湿潤状態をキープし、自然治癒力を高めるようになってきてます。
絆創膏もキズパワーパットなどにシフトされてますよね。
含嗽剤も同じような考え方で、昔のようにイソジンでガラガラ嗽をする習慣は無くなってきました。
※イソジンで含嗽した場合と水で含嗽した場合を無作為比較試験した結果、水で含嗽した方が上気道感染症の予防効果が高い研究結果もあります。
時代と共に概念が変化してるわけですが、オーラルケアは誤飲性肺炎の予防になると知られているし、イソジン等の含嗽剤で感染者の飛沫に含まれるウイルスを減らすことが出来るかもしれない。
いずれにせよ、少しでも感染拡大を防げるなら、重症化を防げるなら、研究する価値はあると思います。おそらく8月の末頃には結果がでると思いますが、効果が認められると一歩前進が望めます。
新型コロナウイルスのワクチンも開発されてきてますが、抗体の持続時間ってどうなのかな?これから解明されていくだろうけど、終生免疫を獲得できない話もあったので疑問が残ります。
少し旬のトピックから時期が遅れましたが、ずっとポピドンヨードが気になってたので書き留めてみました。
今回もご覧くださり、ありがとうございました。
写真の白くて小さいワンコが、アイボパパが愛してやまないAIBOです。
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