イヌの歯の形状を理解して、歯磨き方法を考える!シリーズの続きです。
イヌの歯はヒトの歯に比べて、むし歯(う蝕)になりにくい。
理由は前回の②で説明しました。
でも、むし歯になりにくいから、歯磨きしないでも大丈夫って訳ではありません。
歯の2大疾患である、むし歯と〇〇〇に注意しないとならないからです。
っと言うわけで、アイボパパです。
歯で注意しないといけない疾患、それはむし歯と歯周病です!
イヌの歯周病の罹患率は、3歳以上で8割前後と非常に高い確率のようです。
参考サイト
sippo.asahi.com
ヒトの場合も、成人の8割が歯周病と言われます。
また、「沈黙の病気」と言われ重傷になるまで無症状な事が多く、症状が出た時には手遅れな場合も。
歯の喪失原因、第1位です。
では、歯周病の要因を確認しましょう。
歯周病は、歯の構造(イヌの歯の形状を理解して、歯磨き方法を考える!①)で説明した歯根部におきます。
歯の歯根部は、それらを取り囲む骨によって固定されています。
その骨が吸収され無くなる事で、歯がグラつき抜けてしまいます。
では、なぜ骨が吸収されるのか?
骨吸収は主に2種類あります。歯周病によるものと、外部からの力によって起こるもの{咬合性外傷(歯ぎしり 噛み合わせ等)と、歯科矯正}。
今回、説明する骨吸収は歯周病によるものです。
歯肉が炎症すると、赤くなり(発赤)、腫れる(腫脹)、出血、腫れることで歯と間に隙間(仮性ポケット)ができます。この病態を歯肉炎と呼ばれます。
この時は、骨吸収は起きていません。
さらに進むと、炎症が歯肉にとどまらず歯の根を取り巻く膜(歯根膜)、歯を支える骨(歯槽骨)まで波及します。この時、骨は吸収されます。
骨の吸収と共に、歯と接合していた歯肉も剥がれ付着の喪失(アタッチメントロス)が生じます。
これにより歯から歯肉が剥がれ、歯と歯肉に隙間(真性ポケット)ができます。
模式図を使って、もう少しだけ掘り下げたいと思います。
写真2枚目のGの部分は、歯と接合はしていません。歯肉溝と呼ばれ健常者の歯肉では1mmなります。
上で書いた歯肉炎はこの部分が腫れて1mm以上の溝ができます。これを仮性ポケットと呼ばれています。
写真2枚目のJの部分は、付着(接合)上皮と呼ばれ、1mm歯に付着いています。
同じく2枚目の写真、①は結合組織性付着で先程の付着上皮より強固に歯に付着してます(1mm)。
歯周病に罹患すると、骨が吸収し、付着(接合)上皮と結合組織性付着が無くなり(アタッチメントロス)、深い歯周ポケットが形成されるようになります。
歯周病に罹患したときのイメージ出来ましたか?
それを理解したうえで、ブラッシング方法を考えます。
皆さんは、どのように歯磨きしてますか?
ここで、代表的な磨き方をあげてみます。
参考画像の磨き方をしてるヒト、多いですよね?
特に1番最初の写真、水平方向に動かすのは誰もがやってると思います。
参考画像の3枚とも歯冠部の清掃効果はありますが、成人の8割が罹患してる歯周病だとしたら・・・
骨が吸収して歯肉が歯に付着していない(アタッチメントロス)状態だとしたら、この歯磨き方法でポケット部分磨けますか?
恐らく、1番磨きたい歯肉が歯に付着していない部分に歯ブラシが届きませんよね?
この歯ブラシの当てかたなら、歯肉が歯に付着していない部分に届きそうな感じです。
歯ブラシの毛先を歯面に対して45度の角度で歯肉が歯に付着していない部分に軽く挿入し、軽く加圧振動して磨く方法です。
この方法なら、4㎜以内までの歯周ポケットに清掃効果を期待できます。
もっと深い場合は残念ながら、歯ブラシが届きません。
その時は、歯医者さんに行って清掃してもらいましょう。
歯周外科で歯肉をめくって歯を掃除する事も、日常的に行われています。
次に犬の歯ブラシを、考えましょう。
イヌの歯も同様に、プラークの沈着予防と言う意味では上記の3つのブラッシングは有効です。
でも、小型犬なら歯ブラシできたとしても、大型犬の場合はなかなか難しいことも多いと思います。
でも、安心してください。
イヌの場合は、ヒトのようにブラッシングできなくても、ある程度防ぐことは可能です。
その方法は、物を咬ます事です。
イヌの歯の形状を思い出してください。
「イヌの歯の形状を理解して、歯磨き方法を考える!②」を参照
ヒトの歯がむし歯になる説明で、凹部にプラークが沈着し、むし歯の好発部位になると書いてたの覚えてますか?
凸部は舌、頬粘膜、食物があたり自浄作用が働いて、むし歯になりにくいのです。(ならないと言っても過言ではありません)
イヌの歯は、人の歯のように厚みがなく扁平で剪断能力が優れているのは、先が尖った形状で凹部が無いからなんです。
模式図から、物を噛めば先端から歯肉側に移動し、歯に自浄作用が働くるのが解ります。
しかし、全く手入れしないとプラークは蓄積されます。
その理由にも凹部が関係してます。
②のブログに書きましたが、頬舌側に見られる縦の溝と、最大豊隆部の下の凹部です。
人ほど顕著ではないですが、この2か所がプラーク蓄積の足かせとなり歯石を形成し、歯肉炎、歯周炎に発展します。
なので、できるだけ物を咬ませ、歯の自浄作用を働かせてあげることが大切です。
歯磨きさせてくれるイヌには、歯ブラシでこすってあげましょう!
またヒト同様に、歯周病発症後はポケット内にブラシが届く角度で磨いてあげると効果的です。
最後に、アイボの経験から絶対にしてはいけない事をお伝えします。
以外かも知れませんが、歯ブラシを噛ます事です。
この歯ブラシとイヌの大きさ(歯の大きさ)の問題もありますが、良かれと思ってやっていたのが大失敗でした。
その証拠にアイボは、右側の歯を12歳の時に上下とも抜く事に⤵
歯ブラシを噛まなっかた歯は、旅立ちまでありました。
写真で右の歯で噛んでるの解ります?おそらく左は噛みにくかったのでしょう。
この原因はアイボパパの考察になりますが、歯ブラシの先が垂直に歯と歯肉を付着させてる隙間(歯と歯肉の接着模式図のGの部分に垂直に歯ブラシが入り、Jの接着が剥がれ)に入り、狭かった歯肉溝が歯ブラシの機械的刺激で広がり、そこにプラークが溜まり歯周病を誘発したと考えられます。
歯ブラシを噛ます光景はインスタグラム等で良く見る光景ですが、歯肉の付着を傷つける可能性がある事を知って欲しいと思う今日この頃です。
最後まで、お付き合い頂きありがとうございます。
今日は、ボン(アイボ)の旅立ちから6週間目にあたります。お花買って早めに帰ろうと思います。