イヌの歯の形状を理解して、歯磨き方法を考える!①の続きです。
①でも、お話した通りイヌの歯の構造はヒトと同じで、形体と機能が違うんです。
そもそも、イヌってむし歯(う蝕)にはなりにくいですよね?
むし歯にならないわけではありませんが、少ないです。
それは、なぜ?
もちろん理由があります。
っと言うわけで、アイボパパです。
ヒトは歯磨きしないと、むし歯になりますよね。
では、なぜイヌはむし歯になりにくいか?
食べ物が違うからだろ?
確かに食べ物の違いは理由の一つです。
でも、もっと大きな理由があるんです。
それを理解するために、ヒトの歯でむし歯の好発部位を見ていきましょう!
ヒトの歯でむし歯は、どの歯種にもなり得ますが、最も少ない歯は犬歯や、下の前歯です。
あーーー。犬歯だから犬の歯も、むし歯になりにくいのか?
違います。(一人で自演自作してしまってます・・・)
特に多い場所で言えば、奥歯ですね。
奥歯でむし歯が多い理由は、歯の形状が複雑で溝があるからなんです。
ヒトの歯の模型を、2枚添付しました。右側の奥歯(第一大臼歯)です。
下の写真で確認できますが、1つの歯に多くの山と谷がありますよね。
この谷の部分が複雑で深く、プラークが溜まりやすいので、細菌が産出する酸によって歯が溶けて穴が空き、むし歯になります。
このようなむし歯を、小窩裂溝齲蝕(しょうかれっこううしょく)と言われます。
ちなみに山の部分がむし歯になる確率は、低いです。
では、前歯はどうでしょう?
模型で見た場合と違い、実際は歯と歯はくっ付いています。
このくっ付いた部分がむし歯になりやすく、良くフロス(糸ようじ)した方が良いっと言われます。
このようなむし歯は、平滑面齲蝕(へいかつめんうしょく)に分類される隣接面齲蝕(りんせつめんうしょく)と呼ばれます。
前歯は、もう1点注意が必要な部位があって舌側写真(2枚目)で確認してもらえると思いますが、上の前歯は下の前歯より逆V字(辺縁隆線)にクッキリしているのが確認できると思います。
逆V字の凸があると言うことは、凹があるわけで、先ほどの臼歯同様に凹部はむし歯になりやすくなります。
しかしこのV字型の凹凸は、個人差もみられ全員にあてはまらないです。
中にはとても深い溝になっていて、塞がないといけない人もいますが、少数派になります。
以上のように、凹部(溝)にむし歯がなりやすいわけですが、これらの溝は唾液の流れや、凸部を受け止める等の重要な役割を担っています。
せっかくなので、もう1点ヒトの歯でむし歯を起こす場所も説明しておきたいと思います。
ヒトの歯は頬側側が少し膨らんでいて、その最も膨らんだ部分が歯肉がある少し上にあります。
この部分は、歯の最大豊隆部(さいだいほうりゅうぶ)と呼ばれています。
この最大豊隆部の下には歯肉があるのですが、2枚目の写真の✖の部分は凹部になりむし歯になりやすくなります。
こうような部位は、平滑面齲蝕(へいかつめんうしょく)に分類される歯頚部齲蝕(しけいぶうしょく)と呼ばれます。
このように人の歯のむし歯好発部位を見た時に、凹部分が多い事が解ると思います。
次に、イヌの歯を想像してみてください。
イヌの歯は、ヒトのような食物を磨り潰すための臼歯は無く、切断する役割をする裂肉歯(前臼歯、後臼歯)を持っています。
裂肉歯(前臼歯、後臼歯)の形は特有のものですが、ヒトで言う前歯(切断する役割)を臼歯に持っている事になります。
イヌの歯のサンプル写真を確認してもらえば解りますが、奥歯の部分に裂肉歯が確認できます。
ヒトの臼歯のような厚みが無く前歯のような扁平状で、先が尖り切断する作用に適しているのが解ります。
ここで、ヒトのむし歯になりやす部位がイヌにあるか確認していきましょう。
①ヒトの奥歯は溝があって、小窩裂溝齲蝕になりやすい部位でしたよね?
イヌの臼歯は、ヒトの前歯のように扁平で先が尖り小窩裂溝がありません。
②ヒトの前歯は、隣接面齲蝕になりやすい部位でしたよね?
イヌの歯は、犬種にもよりますがヒトの歯ほど密集していません。どちらかと言えば、隙間が空いています。
③ヒトの上前歯の裏には、逆Vの凹凸が強い人がいてるって話でしたよね?
イヌの歯に辺縁隆線はありません。つまり凹部がありません。
④ヒトの歯は最大豊隆部下の凹に、歯頚部齲蝕ができやすいですよね?
イヌの歯も同様に最大豊隆部があります。ヒトに比べ緩やかなカーブで、歯肉との境界に極端な凹部が見られません。
以上のように、ヒトのむし歯好発部位がイヌの歯に見られないことが解ると思います。
もちろんですが、イヌもむし歯になります。
その場合は、頬側、舌側にみたれる縦の溝が原因になる事が考えられます。
歯に見られる縦の溝は、ヒトにもありますが、好発部位にはなりません。
たまにむし歯になる人もいますが、先ほどの好発部位よりは圧倒的に少ないです。
歯の凸部に、むし歯ができにくい(できない)のは、食べ物を噛むことや、頬粘膜、舌が歯にあたり自浄作用が働くことで掃除されているからなんです。
また唾液も、歯の汚れを流すのに一役かっています。
イヌの歯は食べ物を切断す事をメインにしてるので、ヒトの歯の作用(磨り潰す)をする臼歯の形は必要でなく、切断に適した臼歯の形からむし歯になりにくく、自浄作用が働く構造になっているわけなんです。
今回は、ここで一旦終わります。
次回は、犬の歯の形状を理解したうえで、ヒトのブラッシング方法との相違点を書きたいと思います。(絶対してはいけない方法も、お伝えします。)
最後まで、お付き合い頂きありがとうございます。